マーラー:交響曲第2番「復活」の歌詞(試訳)
マーラーの交響曲第2番を演奏した機会に、歌詞をひととおり訳してみたものです(吟味不十分)。
曲の概要
- 曲名
- 交響曲第2番 ハ短調
- Symphonie Nr. 2 c-moll
- 作曲時期
- 1887/94
- 1903改訂
- 初演
- 1895-03-04 @ ベルリン(3楽章まで)
- 1895-12-13 @ ベルリン(全曲)
- 楽章構成
- 編成
- Pi:(2); Fl:4; Ob:4; Eh:(2); Cl:5; Bcl:(1); Fg:4; Cfg:(1); Hr:6; Tp:6; Tb:4; Tub:1; Timp; Perc; Hp:2; Org; Str; Sop; Alt; Choir
対訳(各セクションの詳細)
復活の5つの楽章のうち、声楽の入る第4、5楽章の歌詞の試訳です。
第4楽章:原光
O Röschen rot! | おぉ、小さなバラよ、赤い色の! |
Der Mensch liegt in größter Not! | 人間はとどまっている、大きな苦難の中に! |
Der Mensch liegt in größter Pein! | 人間はとどまっている、大きな苦痛の中に! |
Je lieber möcht' ich im Himmel sein! | であればなおそうありたい、私は天国にいると! |
Da kam ich auf einen breiten Weg; | そこでやってきた、私はある広い道に; |
da kam ein Engelein und wollt' mich abweisen! | そこでやってきた、ひとりの天使が、そして私を追い払おうとした: |
Ach nein! Ich ließ mich nicht abweisen: | いやだめだ! 私は追い払われるままにはならなかった: |
Ich bin von Gott und will wieder zu Gott! | 私は神からのものであり、そしてふたたび神へと向かう! |
Der liebe Gott wird mir ein Lichtchen geben, | 愛しい神は私に一筋の光を与えてくれるだろう、 |
Wird leuchten mir bis in das ewig selig Leben! | 照らしてくれるだろう、私を、永遠の至福の生命に至るまで! |
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Röschen : n,小さいバラrot : 赤い
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liegt : liegen=横たわっている、位置している、ある、とどまっている(lie)Not : f,難儀、困窮、苦難、必要
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je : ~ずつ、~に応じて、~ますますlieber : lieb(好きな、愛している)の比較級
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abweisen : 退ける、拒絶する、追い払う
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ließ : lassen=~させる、放つ、しておく
第5楽章
Aufersteh'n, ja aufersteh'n, wirst du, | 蘇る、そうだ蘇えるだろう、おまえは、 |
mein Staub, nach kurzer Ruh! | わたしの塵よ、短い安らぎの後に! |
Unsterblich Leben! | 不滅の生命! |
wird, der dich rief, dir geben! | おまえを呼んだ者が、おまえに与えるだろう! |
Wieder aufzublüh'n, wirst du gesät! | ふたたび花開くだろう、おまえは種を蒔かれて! |
Der Herr der Ernte geht | 収穫の主は行き、 |
und sammelt Garben | そして集める、束にして |
uns ein, die starben. | わたしたちを、死んだ者を。 |
O glaube, Mein Herz, o glaube: | おぉ信じなさい、私の心よ、おぉ信じなさい: |
Es geht dir nichts verloren! | おまえからは何も失なわれることはない! |
Dein ist, ja Dein, was du gesehnt! | おまえのものだ、そうだおまえのものだ、おまえが憧れたものは! |
Dein, was du geliebt, was du gestritten! | おまえのもの、おまえが愛したものは、おまえが争ったものは! |
O glaube: Du wardst nicht umsonst geboren! | おぉ信じなさい:おまえは無駄に生まれたのではない! |
Hast nicht umsonst gelebt, gelitten! | そんなことはない、無駄に生き、苦しんだなどということは! |
Was entstanden ist, das muß vergehen! | 生まれ出たものは、それは必ず消え去る! |
Was vergangen, auferstehen! | 消え去ったものは、蘇る! |
Hör' auf zu beben! | やめなさい、震えるのは! |
Bereite dich zu leben! | 備えなさい、自らを、生きるために! |
O Schmerz! du Alldurchdringer! | おぉ苦悩よ! 汝すべてを貫くもの! |
Dir bin ich entrungen! | おまえを私はもぎ取った! |
O Tod! du Allbezwinger! | おぉ死よ! 汝すべてを征服するもの! |
Nun bist du bezwungen! | 今やおまえは征服された! |
Mit Flügeln, die ich mir errungen, | 翼で、それは私が勝ち取った、 |
in heißem Liebesstreben werd' ich entschweben | 熱い愛の求めのうちに、私は飛び去っていこう |
Zum Licht, zu dem kein Aug' gedrungen! | 光へ、どんな目も達したことがないものへ! |
Mit Flügeln, die ich mir errungen, | 翼で、それは私が勝ち取った、 |
werde ich entschweben! | 私は飛び去っていこう! |
Sterben werd' ich, um zu leben! | 死に向かおう、私は、生きるために! |
Aufersteh'n, ja aufersteh'n wirst du, | 蘇る、そうだ蘇えるだろう、おまえは、 |
Mein Herz, in einem Nu! | 私の心よ、たちまちのうちに! |
Was du geschlagen, | おまえが打ち倒したもの、 |
zu Gott, zu Gott wird es dich tragen! | 神へ、神へと、それがおまえを運んでいく! |
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aufersteh'n : 復活する(auferstehen)
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Staub : m,ほこり、ちりkurzer :Ruh : Ruhe=f,休止、静寂、やすらぎ、休息。Ruh'と省略が示されているものもあるが、クロプシュトックの詩の原典でもRuh!になっている。
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unsterblich : 不死の、不滅の。クロプシュトックではunsterblichsLebenのあとの感嘆符はクロプシュトックにはない。
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rief : rufen=呼ぶ、呼びかける。クロプシュトックではschuf(schaffen=創造する。おまえを創造したものがおまえに与えるだろう)クロプシュトックではこの次にHalleluja!の1行。
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aufzublüh'n : aufblühen=花開く、栄える(クロプシュトックでは'なし)gesät : まかれた、種を蒔いたクロプシュトックではwerd ich gesätで「私は種を蒔かれて」
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Ernte : f,収穫、刈り入れ
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sammelt : sammeln=集める >einsammeln=採集するGarben : Garbe=f,束、わら束
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einは前の行のsammeltにつながってeinsammelt。クロプシュトックではuns einを反復している。マーラーがクロプシュトックの『復活』を用いているのはここまで。
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glaube : glauben=信じる
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verloren : 失われた < verlieren=なくす、失う
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gesehnt : sehnen=憧れる、恋しい
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gestritten : streiten=争う、戦う
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wardst : werdenumsonst : 無駄に、いたずらに、無償でgeboren : 生まれた
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gelebt : leben=生きたgelitten : leiden=苦しむ、悩む
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entstanden : entstehen=生じる、起こる、発生するvergehen : 消えていく、消滅する
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Hör' : aufhören=やめる、中止するbeben : 震える
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bereite : bereiten=用意する、準備する
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Schmerz :Alldurchdringer : dringen=突き進む、突き抜ける、押し入る。あらゆるものを
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entrungen : entringen=もぎ取る
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Allbezwinger : bezwingen=征服する
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Flügeln : Flügel=m,翼errungen : erringen=勝ち取る
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Liebesstreben :entschweben : 飛び去って
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gedrungen : dringen=突き進む、突き抜ける、達する
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Nu : m,瞬間、in einem Nu=あっという間に
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geschlagen : schlagen=撃つ、たたく、打ち鳴らす、打ち負かす。助動詞もなくいきなり過去分詞が置かれているため、扱いに困ってschlagenを「脈打つ」と訳したりすることもあるようだが、Was du hast geschlagenとみて「おまえが打ち負かし、克服したもの」とするのが前後の文脈に沿った捉え方だろうと思われる。
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tragen : 運ぶ。この単語からはドイツ・レクイエム(マタイ5:4)のSelig sind, die da Leid tragenを思い出さずに居られない。