英国のDisabilities Rights Commission (DRC)が、1000サイトを対象に実施したアクセシビリティの「公式調査」レポートが、DRC web investigation finds many public websites 'impossible' for disabled people to useとして発表されている(PDFあるいはRTF版のレポートもあり)。8割以上のサイトがWAIの最小限のガイドラインにも適合しておらず、サイトには平均108にのぼる「障壁」が存在するといった結果だ。一方で、問題の半分近くはWCAG 1.0のチェックポイントでは見つけられないという見解が含まれ、それに対してWAIがそんなことはないと反論している。
調査の結果は、予想外の新事実が明らかになったというわけではなく、アクセシビリティ上の基本的な問題が改めて浮き彫りにされたという感じだ。しかし、これだけの規模の公式調査はあまり例がないので、資料として参照する価値はあるだろう。この調査で特徴的なのは、自動検証ツールの限界をかなり厳しく指摘しているところ。
69% of the Checkpoint related problems (38% of all problems) would not have been detected without manual checking of warnings, yet 95% of warning reports checked revealed no actual Checkpoint violation.
アクセシビリティのチェックツールを使うと、とにかく自動チェックできないポイントについてやたら警告が出る。この調査によれば、その95%は問題のないものだというのだから、チェックするのが嫌になってしまう。啓蒙的な意義は多少あるにせよ、過度の(念のための)警告は、逆効果なんじゃないか。このレポートは、だからツールだけに頼らず、障碍を持つ人を制作段階の初期からチームに加えることの重要性を強調している。
レポートの眼目は15項目の「推奨」にあるようだが、これはあまり面白くなくて、むしろ実際の調査Research Phase 1の報告や、WAI指針への提案(という形で利用者にとって問題が大きかった点が示されている)APPENDIX 2の方が、参考になるところが多いように思う。
余談ながら、当のDCRのサイトが、なぜ本文テキストを font-size:85%
なんていう読みにくいスタイルにしているのか、はなはだ疑問だ。調査結果は Graphics and text too small
という点を頻繁に見られる問題のひとつとして明記しているのに。