デジタル画像、特にオンラインで公開されているものに関する情報を記述する時、それがその画像ファイルそのものについてなのか、もとの写真についてなのか、あるいはそこに“写っているもの”について言いたいのかが曖昧になりがちです。何度も繰り返し議論されているこの点を明確にするために、実験語彙Digital Picture Description vocabulary (DPD)を定義してみました。
たとえば、GPSつき携帯カメラで遠くの山を写した場合、そこに記録される緯度経度は、山のものではなくカメラの位置を示しています(ましてやデジタル画像の置かれたサーバーの位置ではありません)。あるいは、Exifに記録されたいろいろなデータは撮影時点のものですが、その写真をPhotoshopで編集したりすると、最終的な画像のデータは違うものになってくる可能性があります。
デジタル画像をfoaf:Image
として記述する場合、上記のような全てのデータを直接のプロパティとすると、どうしてもこうした問題が生じます。そこでDPDでは、撮影、編集といった行為(イベント)を表すクラス'dpd:GenerationEvent'クラスを導入し、それぞれの時点でのプロパティを別々のリソースに対して記述するようにします。たとえば、富士山の写真を富士川サービスエリアから撮影して、あとでPhotoshopで編集した画像を公開する場合は、次のような具合になります。
(例)
<foaf:Image rdf:about="..."> <dc:title>富士川サービスエリアから富士山を望む</dc:title> <dc:creator>神崎正英</dc:creator> <img:width>640</img:width> <img:height>480</img:height> <dpd:generated
rdf:parseType='Resource'> <geo:lat>35.647488888889</geo:lat> <geo:long>139.73964166667</geo:long> <dc:date>2003-12-29T16:39:39+09:00</dc:date> <img:width>1024</img:width> <img:height>768</img:height> <exif:exposureTime>0.0388</exif:exposureTime> ... </dpd:generated> <dpd:edited
rdf:parseType='Resource'> <dc:date>2004-01-06T21:48+09:00</dc:date> <ex:software>Photoshop</ex:software> ... </dpd:edited> <foaf:depicts
> <wn:Mountain> <dc:title>富士山</dc:title> <geo:lat>35.54139</geo:lat> <geo:long>138.99799</geo:long> ... </wn:Mountain> </foaf:depicts> </foaf:Image>
撮影時の天候などを記述したければ、dpd:generated
を介して関連づけることができますし、Photoshopで使ったフィルタの種類などはdpd:edited
と合わせて記述できます。被写体である富士山の説明は、foaf:depicts
によって結びつけます。そして、最終的な公開画像ファイル(完成作品?)のデータは、foaf:Image
の直接のプロパティとして記述するわけです。
単純な画像データの記述に、こんな複雑な仕組みは必要ないかも知れません。でも、写真には実に多様なデータが含まれており、これらをきちんと記述しようとすると、すくなくともそのデータの主語を切り分けないことには収拾がつかないのも確かです。たとえば、著名な画家の作品を模写した絵の写真(をKINKOSで加工してもらった画像)について、dc:creatorとかdc:dateをどうするかというのは、難しそうでしょ?
※DPDは実験語彙で、内容はまだ流動的です。rdfweb-devなどでコメント募集しています。
- 画像とその生成イベント (2004-02-21)