ニューヨーク1997
6月下旬のニューヨークは、サングラスを忘れると苦痛なほどギラギラと太陽が輝いている。10年前初めてここにやってきたのも同じ頃だった。あの時は、街に一歩踏み出したとたん下水の強烈なにおいが鼻を突き、大変なところに来たとげんなりしたものだが、今はどこを改善したのか、全く気にならない。多くの人がニューヨークは治安が良くなった、住み易くなったと言っていたが、それなりに当たっているようだ。
なんだか快適志向?
Starbucks Coffee
ちょっとした快適さという流れは、スターバックス(Starbucks)などのコーヒーショップの人気に端的に現れているような気がした。シアトル生まれのこのチェーン店は、ここ2〜3年ですっかりニューヨークを席巻したという。街中どこに行ってもあの緑の看板にお目にかかるのには感心した。
まあ言ってしまえばドトールコーヒーのようなものだが、ドトールは「安くて(まあまあ)うまい」を売り物にしたのに対し、こちらは「高いけどうまい」というところが違う。tallサイズといってやや大きめではあるが、普通のコーヒーが$1.35だから、一般より5割ほども高い(でも日本より安いけど)。その代わり、香りもちゃんとしているし、メニューにはカフェ・ラテとかいろいろおしゃれなものも揃っている。内装もスマートで、機能的なデザインだ。日本の「喫茶店」とはまた違う、ドトールのような慌ただしいのともまた異なる、少しだけほっとするような空間が演出されている。
Cozy bookstore
同じような種類の快適を、もう一つ見つけた。リンカーン・センター前にできた書店「Barnes & Noble」だ。この書店自体は昔からあるチェーン店で、ベストセラーを中心にしたごく普通の本屋だったのだが、この店舗はがらりと趣を変えている。ゆったりとしたフロアにソファーを配置し、床にはカーペットを敷いて座りこんで(彼らは平気で座る)もいいようにした。児童書のコーナーには子供が遊べるスペースまで設けて、お話会なども開かれているから、子供連れでもゆっくり本を選べるわけだ。
もちろん、本の品揃えもかつてとは比較にならないほど充実している。さらに雑誌売場のある4階には、お約束のようにスターバックスのコーヒーショップまでしつらえられて、いやお見事(日本でも何度か雑誌で紹介されて、同じようにソファを置く本屋が出現したそうだ)。しかし、これは「Barnes & Noble」単独の現象ではなく、街全体の快適志向が生んだものなんじゃないかと思ってしまった。考えすぎか?
その他の表情1997
以下まとめる暇がないので、覚え書きを列挙:
ホテルで10年前のトークン(地下鉄乗車用のコイン)を見せたら「そんなのとっくに使えないわ」と笑われてしまった。今のトークンは$1.5になり、穴あきで一回り小型のものになっている。
ミュージカルはChicagoが大変な人気だった。切符はもちろん売り切れ。当日券が毎朝10時から20ドルで少し発売されるというので、並んでみる。9時半ごろに行ったらもう長い行列がずらり。10時になって売り出してからも列はのろのろとしか進まず、結局途中まで行ったところで売り切れ。1時間ぐらい並んだのは無駄になった。しかし、チケットが足りないのはわかりそうなものだから、整理券でも出せば良いのに、こういうところが無頓着なのは相変わらずだ。
The Fantasticksを10年ぶりで観た。初心に帰った気分で、心が洗われる。ルイーザ役のSara Schmidtが初々しくてとてもよかった。出口で目が合ったとき「ハロー」と声をかけてくれたので、「10年ぶりにこのショウを見るために日本から来た」と言ったら、ずいぶん喜んでくれた。本にサインしてもらう。いい記念だ。シュミットがブロードウェイで成功するといいな。
RANCH 1 というチキンサンドイッチの店が面白かった。ニューヨーク・マガジンの1996年"The best fast food of New York"において"The Best Grilled Chicken Sandwitch on Earth"に選ばれたのだそうだ。さっぱりした味。ハンバーガーほどしつこくないけれど、Subwayほど健康志向でもない、何というか目の付け所がいいぞという感じ。流行るんじゃないかな。
以前住んでいた古いアパートWest Side Studios (215 West 94st) はまだそこにあった! 入り口付近が改装されてずいぶんきれいになっていたが、周囲の街並みはそのまま。しょっちゅう通った日本食の弁当屋「Obento Delight」はまだ看板が出ていたが、シャッターが降りていたのは時間の関係か、それとも廃業してしまったのか。角のデリや、ブロードウェイを南に下ったところのHappy Humbergerも昔のまま。全体的に、だんだん小綺麗になってきているような気がする。