WWW2005のバーナーズ・リーの基調講演に合わせて、Mobile Web Initiative (MWI)の設立が発表された。未だにおまけ扱いの感が強いモバイルアクセスに対して、もっとまともな認識が広まるよう、WAIがアクセシビリティの「啓蒙」に果たしたのと同様の役割が期待される。いや、ホント期待している。
バーナーズ・リーは基調講演の後半をモバイル関連の話題に充てて、
- モバイルアクセスの現状は、1996年当時のウェブによく似ている:スピードが遅い;相互運用性が欠けている;アクセシビリティが低い;など
- しかし、1996年当時のウェブは利用者もコンテンツもビジネスもごく少なかったのに対し、現在のモバイルは、潜在的には、利用者もコンテンツもビジネスもうんと大きい。
- いろいろ制約や問題はあるが、モバイルのコンテンツ制作もアクセスも、シームレスで、複雑ではなくて、信頼できるものにして行かなくてはならない
ということを述べた。コンテンツもアクセスもユニバーサルであること、最近の言い方なら One Web ということだ。
実際、この半年ほど携帯電話からのウェブ利用を日常的に行ってみて、小さな画面とプッシュボタンだけでは非常に使いにくかったりほとんどまともに表示できないページが大半であることを再認識させられた。携帯ブラウザの機能はそれなりに向上していて、Shift_JISしか読めないとか5KBでおしまいということはなく、それなりにCSSもサポートしている(手元のはOpenwave)。それでも、PCの画面を前提としたコンテンツは読みにくいので、ゲートウェイをつくって余分なものを削除して読むというのが現状だ(PCビューアというのもあるけれど、どっちみち画面が狭いので、あまり使う気にはなれない)。基調講演で示された資料によれば、日本の携帯電話のほぼ8割はインターネット接続機能を持つ。定額接続サービスが拡がってきているので、今後モバイルによるウェブ利用がどんどん拡大するのは必至だ。
モバイル向けのページを別途用意しているサービスは少なからずあって、それはそれでありがたい。しかし、今後カーナビでのアクセスが普及したら、またそれ専用のページを作るのかといったことを考えると、やはりひとつのコンテンツがどんな環境でも通用するということ、つまり機種非依存(device independence)が不可欠なのだ。
MWIでは、こうした状況を踏まえて2つのワーキンググループを発足させる。
- Mobile Web Best Practice (MWBP) WGは「コンテンツ提供者が携帯機器上で問題なく閲覧できる Web コンテンツの開発を支援するための制作指針、確認項目、実践例の策定」を目指す
- Device Description WG (DDWG)は、「ウェブ・アプリケーションがモバイル機器を用いて適切なユーザエクスペリエンスを提供できるよう、機器属性記述のためのグローバルに利用可能なデータとサービスを構築可能にする」ことを目指す
コンテンツ作者は、2月にDIWGから出されたノートAuthoring Techniques for Device Independenceとともに、特にMWBPのレポートなどには注目しておきたいところだ。
しかし、今後モバイルアクセスにおいて重要な役割が期待されるMWIなのに、設立時点の創設協賛会員は欧米の6社で、日本のメーカーやキャリアの名前がないのはやや気になるところ。7月1日まで創設協賛会員として参加することが可能とされているとはいえ、事前に情報が伝わらなかったはずはなかろうに、いいんだろうか。まぁ6社にはNokiaも加わってないぐらいだし、昨年11月のMWI WorkshopにはDoCoMoもACCESSも参加していたので、とりあえずはいいのかな。